むしゃなび特集/2006年2号/伊達市室蘭市を含む西胆振のポータルサイトむしゃなび

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■ むしゃなび特集 2006年2号 ■
冬をもっと楽しもう!大滝歩くスキーコース [2/4]
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体験!歩くスキー

 伊達市中心部から大滝方面へ約40分、国道453号線を大滝中学校の看板をたよりに右折し大成橋を越えると中学校が見えてくる。学校前の駐車場に車を止め、徳舜瞥山を背に、すぐ下に広がるグラウンドとそのまわりの森や長流川の一帯が大滝のクロスカントリースキー(歩くスキー)コースだ。

 キートス・マヤという休憩所までスキーをもって歩いていくと、赤い大きな重機がとまっている。除雪車だと思ったら、これがコース整備に欠かせない圧雪車で、シーズン中は3台の圧雪車で毎朝整備をされるそうだ。

 


キートス・マヤ

 幅3メートル程度のコースは、踏み固められ雪面がギザギザカットのポテトチップスの表面のよう。通称コーデュロイバーンである。端にはクラシカルと呼ばれるスタイルのための2本の溝がまっすぐ延びている。この溝にスキー板をはめるのだ。なにもかも始めての光景。休憩所に接する広いグラウンドを中心部に、いくつものコースが広がっている。

 今回、編集部がコースの紹介をお願いしたのは、伊達市にお住まいで、このコースが好きで大滝にも家を建てられたという菊地賢一さん。スキー歴40年という方だ。

歩くスキーにはワックスを使用するワックスタイプの板と使用しないノンワックスタイプの2種類がある。ワックスタイプの板は外気温にあわせてワックスを塗り替える。このワックス台が整備されている休憩所は全国でもまれ。

 
 やわらかいスポーツシューズのようなスキー靴に、かかとの固定されない細い板。久しぶりにスキーを履くので不安いっぱいだったけれど、菊地さんの「だれでもできますよ」との言葉に雪の上にでてみると、平地ではなんなく歩けてほっとした。「歩く」スキーというだけのことはある。リズムをとって颯爽と滑る、というわけにはいかないが、スピードが苦手な私はとにかく怖くない、というだけで安心だ。
地元の方が「大滝のナイアガラ」と呼ぶ長流川の滝。数十メートル続いている。  準備体操をした後に、グラウンドのコースを歩きながらいくつかの走法と止まり方を教わり、菊地さんお勧めのポイントを目指す。ここは地元の方が「大滝のナイアガラ」と呼ぶ長流川の滝で、幅数十メートルもあるそうだ。
横浜より毎年来ているというスキーヤー。「他のコースへいってみれば、ここのコースの良さがよく分かりますよ。有料コースでもこれほど整備がいいとこはない」と教えてくれた。この方は毎年友人達と4.5泊してスキーを楽しんでいかれるそうで、温泉もあるし言うことない、と太鼓判をおしていた。 グラウンドからコースにでて、林の中を進んでいく。しばらくすると川が見えてきた。
 菊地さんに案内されているという安心感もあってか、しばらく歩いているうちに、だんだん周りの様子を観察する余裕が出てきた。



鳥の鳴き声にはっと耳を澄ます。
真っ白な雪の上に、木の実を発見。
葉を落とした冬の木立ちから明るい日の光が差し込む。
水の音が突然聞こえる。
川の真ん中に巨大な大福が!自然のつくりだす雪の造形に腹を抱えて笑い出す。
コース脇にすわりこみ、雪に顔をつっこんで雪を食べてみたくなる。

 そうか、歩くスキーというのは、冬の自然に近づく道具なんだなあ。夏は笹に覆われていて行けないところへ雪があるからこそ近づけるなんて、考えただけでも楽しい。動物はいないかな?と目を凝らしたり、立ち止まって空を見上げたり。いつのまにかほほ笑んでいて、深い呼吸をしている自分に気付く。


歩くスキーの魅力

 菊地さんは、歩くスキーの魅力として「簡単であること」「安全であること」「だれでもできる」こと、そしてウォーキングやジョギングと同じ「有酸素(エアロビック)運動」であるため、生活習慣病予防や、高齢者の健康づくりにも最適であることをあげてくれた。
 確かに腕を使うので、肩を中心に上半身も使う全身運動だ。肩凝りにも効きそう。少し歩いてくると汗ばんでくる。こんなに楽しくて気持良く、カロリーの消費もいいとはお得!な感じ。

 歩くスキーという言葉も親しみやすい。犬の散歩をするのと同じような感覚で、ちょっと一滑り。まさに毎朝のお散歩感覚で楽しめたらいいなあと思った。
 木々に囲まれたコースをゆっくり歩いていると、平日の午前中にもかかわらず、軽やかにすべるスキーヤーに幾人もであった。「男性が多いですねえ」と話していると、軽やかに一人の女性のスキーヤーが現れた。大滝にお住まいの方で、毎朝スキーを楽しんでいるそうだ。お歳を聞いてびっくり。なんと70歳!。6年前におそるおそる始めたそうだが、たちまち好きになったそう。カメラを向けると「汗を拭くので待ってね」。と言われた「家にいてもなにもするこたがないからね」と笑われたが、毎朝スキーで汗を流すなんて素敵!。休憩所でひとりスキー整備をされる姿をお見かけしたが、いきいきと輝いていて、まさにかっこいい〜!。の一言。なれるものなら私もあんな70歳になりたい!と思ったのでした。


ノルディックウォーキング

 菊地さんが歩くスキーに出会ったのは9年前。赴任先の大滝中学校で、当時ワールドカップのノルディック大会出場のため、大滝村のコースで合宿していた、フィンランドのトピ・サルパランタ選手から直接歩くスキーを教わったそう。ちなみに雪のない季節にストックを使って歩く「ノルディックウオーキング」は1998年にフィンランドで生まれた新しいスポーツで、このトピ選手が日本で始めて大滝村に紹介したそうだ。今では、大滝村で講習をうけた指導者達が全国で広め、多くの方が楽しむようになっている。もちろん菊地さんも指導をうけたお一人で、現在は指導者として活躍、大滝村ノルディックウォーキング協会の会長をされている。菊地さんは、後にフィンランドのトピ選手のところを訪れるほど交流を深めていらっしゃる。そういえば、このコースの休憩所の愛称「キートス・マヤ」はフィンランド語でキートスは「ありがとう」という言葉、マヤは小さな小屋を意味するそうだ。


夏は、ノルディックウォーキングのコースになる。ウッドチップを敷いた常設コースで、ノルディックウォーキングの大会も開催されている。
 コース外の雪原をズボっと雪にうもれながら歩いたり、急な坂で転んだりしながらもナイアガラの滝を見られるポイントへ到着しほっと一息。川沿いの斜面を楽しく上り下りしながら無事休憩所へたどり着き、念入りに整理体操をするころには、また来たいなあという気持ちになっていた。 
 寒いのとスピードが苦手。そもそもアウトドアスポーツどころか、まず布団から出ようよ、という生活をしている私にとって、この歩くスキーの爽やかな体験は新鮮だった。
 取材の数日後、伊達市歩くスキー協会の初心者講習会にも参加させていただいたのだが、私をふくめた初心者に丁寧な指導をしてくださっている間、会員たちはそれぞれの技術や目的にあったコースを選び、各自スキーを楽しまれて、各自解散されていた。なんだかあっけないくらいに個々のペースが守られている様子にちょっと戸惑いを感じたほどだ。
菊地賢一さん

 この清々しさは、自然の中で過ごせるというだけではなく、「競う」や「比べる」という発想から解放されて、自分のペースでいられることからくるのではないかなあ。競技向けにトレーニングする人、ゆっくりまわりを見渡して歩く人。子どもから大人まで、いろんな人がいろんな形で楽しめる。障害を持った方や、シットスキーという車椅子型のスキーを楽しむ方もいるそうだ。時には大勢でにぎやかに、時には自然の中で、静かに自分に戻り、孤独と向き合う時間をもつために。こんな幅の広さも歩くスキーの魅力なのではないだろうか。
 それにしても、こんな素晴らしいコースを無料で開放しているとは大滝村もすごい。健康づくりや福祉に力をそそいでいるそうで、また、化石燃料によらない、例えば温泉の熱を利用した花卉栽培に力を入れたり、氷を利用した氷室で野菜を保存したり。このヘルシーでエコな姿勢に共感がもてますね。こうやって保存し甘味のましたナガイモや大根などを販売する直売所も優徳の国道沿いにオープンしたばかりだそう。スキー帰りに覗いてみてはいかがでしょうか?
 歩くスキーを体験してみて、これからの冬の楽しみ方が変わりそうだ。高齢者の愛好家が多いようだけれど、小さな子どもなど、いろんな人に体験してもらいたいと思います。
 スキーのレンタルや講習会もあるので、この冬始めてみませんか?



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