むしゃなび特集/2008年2号/伊達市室蘭市を含む西胆振のポータルサイトむしゃなび

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■ むしゃなび特集 2008年2号 ■
だて文化の未来その1 [2/4]
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第1回だて噴火湾アートビレッジ構想
推進のための拠点づくり推進会議
文化を生かしたまちづくりを目指して

開催日時 2007年10月23日 19:00〜
会  場 伊達市噴火湾文化研究所

「アートビレッジ構想」の今後にむけて


野田 「だて噴火湾アートビレッジ」は、噴火湾文化研究所のメイン構想です。この2年間、絵画、音楽を柱に、噴火湾文化研究所を拠点に試行錯誤でやってきました。息の長い活動にしたいので、ソフト面、施設面で何が必要かを議論できればと思います。

だて噴火湾
アートビレッジ構想


大島 この構想は、絵画、音楽、文学の3部門で実施、または準備が進んでいます。将来の伊達市の文化行政を担ってくれる人材育成を目的に、日本や世界で活躍する方々を講師として招き、指導していただいています。同時にこれらマスタークラスの実施について多くの市民の理解を得るための啓発事業も進めています。
 この構想は、芸術監督の野田弘志先生の約10年の活動を経た上にできあがりました。まずご本人よりその想いを皆さんにお話いただきたいと思います。  (下のコラム)

文化の人材育成
だれがやるべきか−


大島 私たちは、この野田先生の理念を構想の中心に置きやってきました。2年が経った中、このような進め方で良いのか、また、民間ではなく行政の
中でやっていくことについてはどうなのかなど、率直な意見交換ができればと思います。

阿部 情報過多の東京では、音楽をやりたいという気持ちが芽生えづらいという状況にあります。一方、情報の少ない北海道では、高校2、3年生になって「今から音楽をやりたい」という話がきます。音楽をやりたいという気持ちのある子が多いのは素晴らしいですね。
 道内でも、トマムや池田町などには音楽セミナーがありますが、これらは講師も生徒も東京からきています。生徒が地元という意味ではこの伊達の取組は画期的です。

野田 行政や国が積極的に取り組まない中で、行政が人的にも財政的にも応分の負担をするというのが素晴らしいのではないでしょうか。

楽木 民間がやろうが行政がやろうがどちらでもいいことです。問題は、何のため、だれのためにという目的がしっかりあり、それが理解されれば良いと思います。経済に置き換えると、利益が市民にいくならば、どこがやるかという議論には意味がありません。やれる者がやり、その果実を市民が得られれば良いことです。

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純粋な芸術を追求する中で本物の人材育成を
                              野田 弘志

 私が長年考えていたことが、構想という形で具体化するとは夢にも思っていなかったので、実現して大変うれしいことです。
 この構想は、私が現代社会の中で真に芸術を追求する中で感じる矛盾、困難の中から生まれてきました。文学でも美術でも、純粋なもの本質的なものは地味で儲かりません。そして人生をかけなければできないものです。今の日本では、芸術を追求するのが難しい。ほとんどがサブカルチャーになりました。 

 スーザン・ソンタグの言葉をかりると、近代は価値観が破壊され、利己主義が勝利した時代。商業主義が破壊的な事態をおこし、金銭価値の高いものに価値があるような時代になってしまいました。人々はほとんどがにせものなのに、本物と思い追求してしまっています。
 人間の社会には、だれかの役に立ちたいという「利他主義」というものがあったのだが、この考えは時代遅れと考えられるようになってしまいました。行為の理由として、金銭、快楽、健康これのみという風潮です。
 人々は、頭で考えた観念ばかり重視し批判するが、真実というのは実際の直接体験をなくしてはでてきません。芸術の世界でも同じ。身を以て参加するという直接体験、具体性が重要。真剣な体験をし、ゆっくり静かに考えることが大切だが、スピードの求められる現代ではこれが難しい。
 日本人は品格を失いすぎました。このままでは日本はだめになる、本物をやらないといけないと特に感じるようになりました。それがこの構想のきっかけです。
「だて噴火湾アートビレッジ」では、ここ伊達で、本格的なハイカルチャーを育み、育てていくことをしてきました。自分と戦いながら全身全霊をかけ芸術をやっている人に、自前でボランティアできてもらい、自分の体験を通しながら、子どもに向き合い、子どもを育てることが大切です。



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